お仕事でお世話になっております、ライターの安藤智子さん。
『ドブ板トランジット』の電子書籍の表紙デザインをさせていただきました。
<Amazon Kindle版>102円(税込)
<内容紹介>
小説の舞台は横須賀、米軍基地前のドブ板通り。
時代は1975年、ベトナム戦争終結間際。
土地っ子の少女(主人公)が18歳になって覚えたものは、外人バーで飲む酒と乱痴気騒ぎ。そして恋愛の歓喜と、恋が突然終ってしまったあとのカオス(混沌)。
底抜けに能天気な米兵たち。ドブ板で働く金髪おばさん。同性愛者のバーのマスター。こうした有象無象が分け与えてくれたものを頼りに、少女はカオスと向き合ってみるのだが──。
この作品を、『三田文学』創刊100年記念新人文学賞に応募。
惜しくも受賞は逃がしたものの、候補に挙げられ、『三田文学』2012年夏季号に掲載。(オリジナル原稿100枚を60枚に縮小)
電子書籍では、オリジナル原稿を掲載しています。
『文学界』(文藝春秋)2012年10月号「新人小説月報」で、文芸評論家の三浦玲一氏はこう書いています。
「安藤智子『ドブ板トランジット』は、語り手の強い自我を立ち上げることが、物語の主題となっている」
『三田文学』111号「季刊・文芸時評」で、文芸評論家の水牛健太郎氏が次のように評しています。
「安藤智子『ドブ板トランジット』は、ベトナム戦争末期の横須賀基地前の飲み屋を舞台にした回想もの。語り手は彼氏との同棲資金を稼ぐべく、ゲイのデニーの店に顔を出すようになる。ホステスではあるが、若さの強み、気ままな立場である。米兵と女たちの連日連夜のバカ騒ぎ、酒、金、色恋の絡む様々なエピソード。またとない人生経験の場でもある。
それぞれにはじけて彩り鮮やかな登場人物の中で、作家志望の彼だけがくすんで見える。頭でっかちで理屈ばかりだし、言うことも何だか薄っぺらくてありきたりだ。
やがてサイゴンが陥落して飲み屋街は寂れ、語り手も足が遠のく。彼には去られ、一つの季節の終わりが明確に示される。そして彼ではなく、語り手が作家への一歩を踏み出すという、ひねりのある結末となっている。読みごたえのある作品だった」